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【連載】ビギナーのためのECビジネスAtoZ 第二回:事業戦略のための思考フレームワーク活用のススメ

2014年1月27日 カテゴリ: タグ:, ,

戦略

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【連載リスト】ビギナーのためのECビジネスAtoZ
 第一回:ECって面倒臭いんだよ
 第二回:事業戦略のための思考フレームワーク活用のススメ
 第三回:ECサイトOPENまでの具体的タスク
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元店長です。

連載二回目は、思考フレームワークを使った事業戦略について。
タイトルだけ見ると、なんだか小難しい内容を想像しますが、決してそんなことはありません(ご安心を)。

前回「ECビジネスは結構大変でっせ」というお話をしました。ポイントは「ECサイト作るのが大変」なのではなく、「EC”ビジネス”をやるのが大変」という部分です。
これはそもそもECに限ったことではなく、あらゆる商売に関して言えることですよね。何らかのアイデアを形にし、価値交換の結果としての対価を得ることは、内容によらず、また時代を問わずとっても難しいことです。

ビジネスを始めたことのない人は、「新規事業をやろう!」と思っても、何から手を付けていいか分からない場合も多いと思います。ECに限って言えば、「ネットでモノ売ろう!」→「何売ろう?コレにしようかな?」→「とりあえずWebサイト作って商品並べてみた!」なんてサイクルになりがちなもの。これでは、確かに「ECサイトを立ち上げた」とは言えますが、とてもじゃないけど「EC事業を推進している」とは言えません。

ぼくが今回ご紹介したいのは「思考フレームワークによる事業立案の方法」です。
「思考フレームワーク」というと小難しそうですが、つまりは「考えることを助けてくれる方法論」のことです。
皆さん、「SWOT分析」とか「マーケティングの4P」とか聞いたことないですか?あるいはコンサルタントが良く分からない横文字を連呼する場面を想像して下さい。つまり、アレです(少し乱暴ですが)。
現場の人間からはとかく嫌われがちな「あのただただ理屈っぽくて、でも実際は何すりゃいいのか良く分からない横文字群」こそが、ぼくが今回紹介したい「思考フレームワーク」なのです。

「あんなの理屈だけじゃん。何の意味があるの?」そう感じる人もいることでしょう。
が、思考フレームワークは本来「他者から押し付けられるもの」ではなく「自分で都合よく活用するもの」です。
「何か」をしたい時、でも「何から」手を付けて良いか分からない時、このようなフレームワークは思考を論理的・順序的に進めるための便利な手段となります。

例えば前段の例で言うと、「ECサイトを始めてみた」は良いものの、運営を進めていく中で、おそらく本人の心には、下記のような不安が渦巻くはずです。

  • 本当に売れるんだろうか?? ←確信が持てない不安
  • 売れなかった時どうしよう? ←打ち手に関する不安
  • どうして上手くいかないんだろう? ←理由が分からないことに対する不安
  • どうやれば上手くいくのかな? ←成功イメージが持てないことに対する不安

これらはすべて「分からないこと」に対する不安と言えます。
言い換えると「理由と根拠」を持てないことに対して、漠とした不安を感じるわけです。
人間の本能として、いわゆる5W1H(What/Which/Who/When/Why/How)がきちんとハラオチしていない時には強い不安を感じるものです。そして、これら”根源的な不安”を抱えたままの状態では、正しい意思決定は困難です。

思考フレームワークの活用は、上記の不安を解消してくれる効果もあります。
フレームワークを使って「論理的」に物事を整理して考えることによって、思考の抜け漏れを防ぎ、MECE(重複無く、漏れ無く)に必要な事柄を抑えることができるからです。

勿論これらを実践したからと言って”必ず”上手くいくとは限りません。そもそも、どれだけ綿密なプランを立てたとしても、なーんも考えてない競合他社に負けることだって良くあることで、これはもう理屈だけでなく潮目とか運とかの問題も絡んでくるので、致し方ありません。が、個人的な経験としては、これから紹介するフレームワークは、間違いなく思考のサポートをしてくれるものであり、何も考えずに物事を始めるよりも確かに成功可能性を上げてくれるものだと言い切れます。
ただこれらは、単なる”道具”に過ぎないことも事実。
そこんとこよろしくご理解頂ければ幸いでございます。

そうそう、もう一点。
我ながら偉そうなことを書きますが、これらすべてを自分自身がきちんとできているわけではありません。様々な諸事情(=言い訳)により、恥ずかしながら正直できてないことだらけです。なので本連載は、自分自身への戒めでもあるわけです。悪しからず。

さて、早速始めていきましょう。(相変わらず前置きがやたら長くて恐縮です。。。)

◆なにやる(売る)の?

ECビジネスを始める時、まず決めるべきは「取り扱う商品」であることは言うまでもありません。
何売るか決めないと、何も始まりません。

多くの人は、ここで「自分が好きなもの」を売ったりします。好きなものについては、知見もあるし、市場も需要も想定できるからです。何より自分のモチベーションが上がります。あるいは「世の中の有り様から判断した”流行りそうなもの”」に目を付けるかもしれません。また別の人は「簡単には手に入らないレアなもの」を扱いたいと思うかもしれません。

まあここは、多分に個人的な見解や想いが入ってくる部分ですので、本連載で語るべき部分ではありません。「趣味のテディベアを売って商売にしたい!!」と思ってる人に「電子機器売りなよ」と言ってもどうにもならないでしょうしね。そもそも、「良く売れるもの」には無数のプレイヤーが参入してきますので、得てしてコスト競争になり、利益が上がらずに儲からない、ともなりがちな訳で、つまり正解はないのです。

ここでご説明したいのは、取扱商品の候補として何を選んだとしても、「それが適切なのかどうか」を評価する方法です。

商売をやる場合、まず見るべきは、「その商売をやるに当たって影響が生じる人々」です。
これらを見るためのフレームワークとして「3C分析」というものがあります。3Cはビジネス環境分析手法の中でも最も代表的・中心的なものであり、すべてはここから始まると言っても過言ではありません。
3Cとは、すなわち「自社(Company)」と「競合他社(Competitor)」と「市場(Customer)」であり、頭文字を取って「3C」と称します。

  • 自社(Company):自社の体力・技術力・人的リソース・特徴などを分析
  • 競合他社(Competitor):他社の状況・独占度・規模・リソース・自社と比較した時の強みと弱みなどを分析
  • 市場(Customer):ニーズ・飽和度・規模・潜在顧客・成長性・購買者特性などを分析

つまり「己を知り、敵を知り、顧客を知る」わけですね。
この辺のことは、小難しくしようと思ったら際限なくて、それこそパワーポイントであれば幾らでもページ数が増やせます。
ただ、ここで語りたいのはそういうことではなく、単に「それって自分とこでやれんの?」「お客さんいるかな?」「ライバルはどうやってるかな?」ということを一度考えてみましょう、というレベルです。これだけでも、やるとやらないとで大きく差が出ます。大切なのは「自分の頭で思考すること」。繰り返しますが、フレームワークは単なるツールであり、ツールに振り回されてはいけません。

これらをはかることで、例えば「始めてみたらまったくニーズがなかった」「仕入れコストが高すぎて自社資金が間に合わなかった」「競合が強力すぎて、入り込む隙間がなかった」等の悲劇を(ある程度)回避することができます。

逆に「消耗品だし、一定のニーズは継続してあるなあ。」「単価が安いので、小資本でもリスクなく始められるなあ」「ニッチジャンルで意外に競合他社が少ないなあ」といった評価ができれば、商売に対して「安心して進める根拠」ができますよね?根拠ある安心、大事です。

◆どうやって売るの?

皆さん、マーケティングという言葉を聞いたことがありますか?はい、ありますね。では、マーケティングって、どういう意味か知っていますか?

・・・これ、意外に答えられない人が多いのではないでしょうか?
ぼくが思うに、いい年したビジネスマンでも、良く分かってない人が多いように感じます。
でもこれは仕方ないことで、世の中にこれほどふわふわした言葉って、あんまりありません。単純なことを言えば、街角アンケートも立派なマーケティングと言えますし、新商品開発や既存商品のパッケージを改善することもマーケティングです。

ぼくの考えでは、マーケティングとは「どうやって売るか?」とう取り組みの総称です。
だとすると、ECにおいても非常に重要なキーワードであることは間違いありません。

特にWebマーケティング、というジャンルは、ある意味新時代のワードで、主にユーザーの主要導線である検索エンジンや、そこから誘導されるWebサイトを中心とした施策として既存のマーケティングと一線を画していますが、これはこれで「どうやって売るか?」という本質から外れているわけではないので、やはりマーケティングの一種と言えるでしょう。が、やはり専門的・手段的に過ぎるので、別項で説明したいと思います。

事業立案時のマーケティングは、もっとprimitive(原始的)なものであるべきです。いきなりWebマーケティング、のような手段に軸足を置いてしまうと、本質を見誤ります。もっとシンプルで、本質的なマーケティングを考えるには、いわゆるマーケティング・ミックスというフレームワークが適します。

マーケティング・ミックスは下記の4つのPで構成されます。

  • Product(商品)
  • Price(価格)
  • Place(流通チャネル)
  • Promotion(販促・コミュニケーション)

つまり、「どういう物を」「幾らくらいで」「どこで」「どうやって」売るか、を考えるわけです。これもフレームワーク無しでは、MECEでなく、さらに根拠を欠いてしまう結果になりがちです。

ポイントは、4つのPはそれぞれ連動すべき、という点です。
商品が「安っぽいアジア製」なのに、価格が「既存国産商品より高価格」だと、おかしいですよね?
または、価格が「数万円」なのに、流通チャネルが到着保証のない「メール便」だと、ちょっとまずいですね。
顧客の記憶に自社を刻み込むための「ブランディング」も重要な要素です。

自社で取り扱う「商品」を改めて評価して良く知り、適切な「価格」を設定し、利便性が高く価格に合った「流通」を確保し、さらには「どのようにお客様にその商品の情報を届けるか」を考える。これらを個別ではなくて総合的に考えることで、「どうやって売るの?」に対する答えが、自分の中で根拠を持って構築されてくるわけです。

説明してしまえば簡単で当たり前のことですが、フレームワーク無しで考えると、結構どれかが欠けてしまうものです。

◆ライバルを意識しよう!

いかなる市場に参入したとしても、競合他社の存在は避けられません。
あらゆるモノとサービスで溢れる現代においては、「無いものは基本的に無い」のです。
つまり、何を扱ったとしても、ライバルとの競争を多少なりとも意識せざるを得ません。
ライバルに勝てば、彼らが今まで持っていた顧客を一気にこちら側に持ってくることも可能です。
つまり、競合対策ですね。

競合対策のための思考フレームワークとしては、マイケル・ポーターという超有名な経営学者が提唱した「競争戦略(Competitive Strategy)」というものがあります。

これは、競合に対する自社の基本戦略を下記3つのパターンで表現したものです。

  • コスト・リーダーシップ戦略:コスト面で優位に立つ戦略
  • 差別化戦略:他社と異なる特徴により、明確な差別化を打ち出す戦略
  • 集中戦略:特定の領域に集中して一点突破する戦略

この中で、コスト・リーダーシップ戦略は、そのまま「規模の経済性(スケールメリット)」と不可分ですので、個人のECレベルでは目指すべきではないです。可能であれば、差別化と集中を基本戦略とするのがセオリーでしょう。

一方で、これもマーケティング界の巨人、フィリップ・コトラーが提唱している「地位別戦略」という考え方もあります。
これは、事業者を下記4種類に分けて、それぞれの戦略を分析するものです。

  • リーダー:トップランナーとしての全体化戦略
  • チャレンジャー:主に差別化を打ち出し、二番手としてリーダーとガチンコ勝負
  • フォロワー:トップと二番手の後を追うために、模倣やおこぼれ狙いの戦略
  • ニッチャー:特定の領域に特化

ここで興味深いのは、「TOPや二番手を追うために、模倣やおこぼれ狙い」を戦略とする「フォロワー」が”認められている”という事実です。普通に考えると、他社の真似というのは嫌われますし、侮蔑の対象となります。が、純粋に事業を考えると、これも立派な戦略、ということになります。本題からずれますが、そういう意識で中国や韓国の企業を見ると、また見える景色も変わってきますね。

集中戦略、ニッチャー戦略は、いわゆる「カテゴリ・キラー」と言えるかもしれません。
これは、他社が網羅的に事業展開を進めている中で、意図的に狭いカテゴリに特化してその分野で一気にトップを目指す戦略です。例えば百貨店が消費の主役だった時代から、家電量販店やファッションブランドがどんどんカテゴリに特化してシェアを伸ばしていったことなどが良い例です。
カテゴリ・キラーを目指す、というのも、小資本事業者に適した方法だと言えるかもしれません。

以上、競争戦略とこの地位別戦略を併せて考えると、自分のサービスがどのようなポジションを取るべきか、おぼろげながらに見えてくるのではないでしょうか?

◆何故上手くいくと言えるの?

おそらく今から商売を始める人にとって、究極の命題がこれでしょう。
実際、こんなこと言われても、困っちゃいますよね。そんなの知らねーよ、と(笑)。
確かに、やる前からこんな質問に明快に答えられる人はいないでしょう。

しかし、今回のエントリで何度も繰り返しているように「自分なりの根拠を持つ」ことはとても重要です。

上手くいく、と自分で思い込むためには、下記のフレームワークが有効です。

  • 顧客のスイッチング・コストを意識する。
  • コンティンジェンシー・プランの策定。

まずスイッチング・コストについてですが、これは「顧客が競合他社から自社サービスに乗り換える際に顧客が感じるわずらわしさ」のことです。顧客がある別のサービスを使っていて、そこに対して「離れられない理由」がある場合、それを引き剥がすのがどれだけ大変か、という話です。例を挙げると「ポイントサービス」がこれにあたりますね。例えば「楽天スーパーポイントが溜まっている人が、送料無料にひかれてAmazonに乗り換えた」なんて例は、このスイッチングコストを華麗に乗り越えたパターンと言えるでしょう。

つまり、競合をと自社を見る時、「果たして顧客が自社になびく理由はあるか?」を考えるのです。
それは価格的なものかもしれないし、自社ならではの付加価値かもしれない。
いずれにせよ、もしその理由が思いつけば、これほど安心できることはないでしょう。胸を張って「自分のビジネスは上手くいく!」と言えるのではないでしょうか?

次に「コンティンジェンシー・プラン」についてですが、これは「最悪の場合のプラン」という意味であり、バッドシナリオあるいはリスクマネジメントと言い換えることもできます。

事業において最悪の事態は、勿論事業消滅ですが、事前に「最悪の場合のプラン」を考えておくことによって、回避できることは少なくないです。大企業が新規事業を行う際の「撤退基準」もコレに当たるかもしれません。

「事業を作っていく」ことにフォーカスした本連載において、コンティンジェンシー・プランを取り上げることに対して、違和感があるかもしれません。が、ぼくは事業における「不安」はおしなべて「理由が分からない」ことに起因すると考えており、そういった意味からは、「最悪の状況」を常に想定しつつ走ることは、逆に安心に繋がると思うのです。

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いやはや、長くなりました。。。
当初はサクッと「こんな思考のヒントがあるよ」と紹介だけするつもりだったのですが、理解してもらおうとすると、やはり文字数がかさみます。

ともあれ、まず「事業・ビジネス」というものを想う時に考えておくべき内容を、あくまで自分の経験から綴ってみました。
これらのフレームワークに沿って思考を展開する中で、自分を客観的に見つめる機会も増えるはずで、そういった意味でも、事業の失敗可能性を減らせるものと確信しております。

是非今後ビジネスを考える際に、思考の一助として頂ければ幸いです。

次回は「ECサイトOPENまでの具体的タスク」として、より具体的なECビジネス開始のプロセスを書きたいと思います。