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【豆知識】薬としてのスパイス

2016年9月3日 カテゴリ: タグ:

◆スパイスの薬効

残念なことに現在の欧米諸国ではスパイスを薬用に使うことはほとんどなくなってしまいました。けれど中国では今もいわゆる漢方として処方されているほか、インド古来のアーユルベーダでは何千年も前と同じようにスパイスを処方しています。こうした東洋諸国ではカシアやジンジャー、カルダモン、ペッパー、ゴマ、ポピーなどが最も古くから薬用に使われてきたものと考えられています。
一方メソポタミア文明ではディルやアニス、キャラウェイ、フェンネルなどのシード類が一般的に使われていたようです。
また、エジプトやギリシャ、ローマなどでも古代文明の時代から、国産、東洋産を問わず、様々な植物を薬用に利用していました。1世紀に欠かれたプリニー著の「博物学(全37巻)」の第7巻は、すべてが薬用植物について割かれているほどです。この頃のギリシャ人が残した薬用植物についての知識は、古くから東西の貿易の担い手であったアラブのスパイス商人に受け継がれ、彼らが東洋から学んだ東洋医学の知識とミックスされました。そして11世紀にアラビアの医者アビセンナがその集大成を本に著して逆に西洋に伝えるようになったのです。こうしてアラビアの商人達は、品物だけでなくまさに知識までも東から西へと運んだのでした。

薬効の知識とともに西洋に持ち込まれたスパイスは、今でこそすたれてしまったものの、当時は医学的にも大変重宝されました。もともと抗菌作用などが認められ、食品に香りや味を加えるとともに保存にも大いに利用されたのですから、その作用を薬学に応用しようとしたのも自然な流れと言えました。ペッパーなどのスパイス商人がそのまま薬剤師になってしまうことも良くあったようです。ヨーロッパは古くからたびたびペストなどの伝染病に悩まされましたが、これは空気が不潔であるためと考えられ、スパイスに空気を綺麗にする作用があると思われてもてはやされるようになっていきました。
ブレンドして作ったにおい玉(ポマンダー)や、小袋に入れたポプリなどを、防臭のためだけでなく病気予防のために絶えず身に付けるのが流行しました。

こうした伝染病予防のほかに、当時スパイスはヘビの噛み傷の解毒や夜尿症、生理不順、弱視、痔疾、黄疸、消化不良、糖尿病、偏頭痛、不眠症、精力減退など実に様々な症状に処方されていました。これらの症状の中には、現在もスパイスの効果が認められているものもあります。
また、マスタードやカイエンペッパーなどのように体をポッポと温める作用があるものは、風邪や循環器系統の疾患、筋肉痛や肩こりなどに処方されました。古代ギリシャでは、肺の疾患にはマスタードの湿布を胸に貼って肌を温めれば、肺が広がって呼吸が楽になると信じられていました。実際長いこと湿布をしておくと肌がやけど状態になるほどです。また粉末のマスタードを湯船に入れたマスタード湯につかり、足の筋肉痛を和らげたり、風邪の治療などにも利用したと言われています。

一方、チリにはカプサイシンという物質が含まれていて、血中に入ると血液循環を高める作用があるとされています。血液循環が良くなれば肩のこりもほぐれるので、昔から筋肉痛の塗り薬にチリが処方されてきました。霜焼けや神経痛、腰痛などの薬にカイエンペッパーが使われていたことも分かっています。
その他に体を温める作用で知られるものに生姜があります。中国ではその薬効がはるか昔から認められていて、長い航海に出る時には鉢植えの生姜を持ち込んで少しづつ食べ、壊血病を予防したといいます。現在の中国を中心とした東洋医学でも、風邪や咳、腎臓の疾患、二日酔いなどの薬に生姜が広く処方されています。日本でも風邪を引いたりすると生姜湯を飲んで体を民間療法が昔から良く知られていました。ヨーロッパでも様々な薬効があると盛んに使われていた時代がありました。最近の研究では血液循環に刺激を与える作用、脂肪の多い食べ物の消化を助ける作用、さらに乗り物酔いなどを防ぐ効果が生姜に認められ、薬用としての利用があらためて見直されてきています。昔からの生活の知恵から現代人が学べるものは決して少なくないと言えるでしょう。

スパイスには消化を助ける作用があることは古くから知られていました。古代ローマでも宴会で濃厚な料理をたっぷりと食べた最後にデザートとしてスパイスケーキを出し、消化に役立てるのが常識でしたし、現在でもインド料理などでは食事の最後にアニスやフェンネル、キャラウェイ、ディルなどをたっぷり入れた料理が出されます。

他にアジョワンやカシア、セロリシード、チリ、クミン、フェネグリーク、ジンジャー、マスタード、ペッパーなどにも消化を助ける作用が認められています。ディルウォーターなどは今も赤ちゃんのしゃっくりが止まらなかったり、お腹の痛みを訴えたりした時に飲ませています。

最近の研究では、シナモンに細菌やカビの繁殖を防ぐ作用があることが分かりました。シナモンは古代エジプトでミイラを作る時に使われていましたので、古代エジプト人達はこうした効果を漠然と知っていたのではないかと思われます。このような抗菌作用はアニスにもあり、現在ではほとんど咳止めの薬の香料や腹痛の薬に処方されています。また、クローブも防腐作用のあるスパイスで、緩効性の麻酔効果もあるので、昔からホールで噛んだり歯茎に刷り込んだりして歯痛を和らげるのに利用されてきました。熱い湯で煎じてクローブティにして飲めば、吐き気を収まらせたり、消化不良にも効果があります。

このようにスパイスははるか昔から、香りや味を楽しむだけでなく、薬としての効果が認められ、様々に利用されていました。こうした効果もスパイスをより神格化させるに十分な理由となったのです。

◆精油の利用

芳香性の植物から抽出される芳香のある揮発性の精油は、古代から病気の治療のほかに香水やお香、防腐剤として幅広く利用されてきました。7-11世紀のイスラム帝国時代に、アラブの科学者が蒸留法を完成し、植物から効率良く精油を抽出できるようになりました。当初はシナモンやクローブなどで試され、またバラから抽出した精油は高値で取引されました。この蒸留の方法は、十字軍やその従者達によってヨーロッパに伝えられ、14世紀には薬剤師の団体であるギルドも設立され、このギルドで精油のほかに軟膏や抽出液なども売り出していました。

今日ではスパイスの生産国、輸入国の多くが精油の生産を行っていますが、この蒸留には大量の良質な原料が必要になる上に時間もかかり、設備も大掛かりなものとなります。このためどうしても精油は高価なものとなってしまいますので、最近では化学的に精油の成分を合成する方法も盛んに研究されています。ただし、こうして合成されたものには芳香は再現されていますが、天然の精油にあるような薬効成分は含まれていません。このために合成した精油は薬用にはされず、もっぱら化粧品や加工食品などの香料として利用されています。

天然のスパイスから採れた精油はアロマテラピーでの活躍も目立っています。病気に対する体の自然抵抗力、自然治癒力を高めようとした昔ながらの治療法を見直し、科学的に研究して現代に応用しようとするものです。マッサージや入浴などに利用したり吸引したりされ、種類によって鎮静作用や刺激作用なども認められています。スパイスからとれる精油の中では、シナモンやジュニパー、クローブなどが重要視されています。
精油は品質が安定し、細菌やカビの心配もないので、輸送には理想的な形です。今後このような形での輸出入がますます増えると考えられます。

(参考:山と渓谷社「スパイス完全ガイド」)