【連載】ビギナーのためのECビジネスAtoZ 第三回:ECサイトOPENまでの具体的タスク
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【連載リスト】ビギナーのためのECビジネスAtoZ
第一回:ECって面倒臭いんだよ
第二回:事業戦略のための思考フレームワーク活用のススメ
第三回:ECサイトOPENまでの具体的タスク
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元店長です。
前回までの記事において、「ECを戦略的にプランニングする」ということについて書いてきました。
ただ何となく、で始めるのではなく、すべての意思決定と立案に対してしっかりと思考し、成功へのイメージを納得できる形に具体化することがその目的でした。
今回からは、より具体的な「行動・実施」にフォーカスした内容になります。頭で幾ら考えても、手を動かさないと一歩も進まないわけで、では何をどのように動かせば良いか、ということですね。
商売・事業の内容が固まれば、次にやるべきは「準備」です。ECとは所詮「インターネットでモノを売る」ことですから、準備とはすなわち「開店準備」ということになります。
◆やることリストの作成
「何をどうやればいいか」を明らかにするためには、まずは「やることリスト」を作ってみるのが良いでしょう。
ただ茫洋とToDoを連ねても、「果たしてそれがMECE(重複無く・漏れ無く)であるか」は分かりませんので、まずはビジネスに登場するすべての要素(登場人物やモノ・場所)をビジネスの流れに沿って図示してみることをオススメします。
ECの場合、まず「売る人」がいますね。これは自分自身(事業者)のことです。そして買う人、つまりユーザーがいます。さらに「売る物(商品)」があって、「売る場所(サイト)」があります。「売る物(商品)」については、もし自分でコツコツと手作りするのでなければ、どこかから仕入れてくるしかありませんので、「仕入先」という登場人物も必要です。
これらの要素を、ビジネスの流れに沿って並べてみましょう。
- [仕入先] – 仕入れ –>> [売り手]
- [売り手] – 陳列 –>> [Webサイト]
- [Webサイト] – 購入 –>> [買い手]
- [買い手] – 支払い等やり取り –>> [売り手]
- [売り手] – 発送 –>> [買い手]
ECにおける大きな流れとしては、大体こんな感じになります。
上記は最も基本的な「大きな」流れですので、各STEPごとにさらに細分化していく必要があります。例えば[仕入れ]については、こんな感じです。
[仕入先] – 仕入れ業者リストアップ –>>
– 商品問い合せ –>>
– ロット確認 –>>
– 価格交渉 –>>
– 業者選定 –>>
– 実際の仕入れ –>> [売り手]
同様にすべての要素を「商売の流れ」に沿って分解していけば、自ずと「やらなければいけないこと」が浮き彫りになってきます。
◆とどのつまり、ショッピングカート
誰かに「モノを売る」というのは、実は想像以上に大変なことです。
リアルの対面販売を想像してみてください。
- 売り手は、商品を「売る場所」に”陳列”します。
- 買い手は、雑多な商品群から商品を”探し”ます。あるいは目的もなく”見て回る”かもしれません。
- 売り手は”買い手の気をひく”ために、値引きやポイントカードなどのプロモーションを行います。
- 商品に対して不明点がある時は、買い手は”質問”します。売り手はそれに対して”返答”します。
- 購入時はレジにて合計額を”計算”し、買い手はお金を”支払い”ます。
- 買い手は購入したものを”袋に詰め”ます。
- もし不良品があった場合、買い手は再度来店し、”クレーム”を言ってきます。売り手は”適切な対応”を取る必要があります。
- 買い手にまた来てもらえるように、売り手は”再訪問を喚起”するための施策を打たなければいけません。
どうでしょう。「売り買い」という行為の中には、実に様々な要素が含まれていることが分かりますね。
これら一つ一つの要素において、PC画面の先にいる見えない顧客に対して、自分で方法を考えて実際に運用していくのは、大変なことです。と言うか、無理ですよね。
幸いなことに、現代においてECのシステムは非常に成熟しており、上記のような要素をシステムの「機能」として利用可能なサービスが多数あります。
それが「ショッピングカート」といわれるシステムです。
「ショッピングカート」とは、単純に日本語に訳せば「買い物カゴ」となります。
元々このシステムが世に出た時は、言葉そのまま「複数の商品をまとめて入れたままサイト内を回遊できる機能」でしかありませんでした(もう15年以上前のことです・・・遠い目)。
時代を経て、様々なカート事業者が乱立し、ユーザーからのニーズも多様化していく中で、ショッピングカートシステムは豊富な機能を備えるようになり、「トータルECシステム」へと変貌していきました。従って、本来ならば「ECサービス」と呼ぶべきなのですが、未だにほとんどのサービスが「高機能カートシステム、ショッピングカートシステム」という呼称で存在していますので、本連載でも「ショッピングカートシステム」と呼びたいと思います。
前述した「売る場所」については、このショッピングカートシステムを導入するだけで事足ります。
今ある多くのカートシステムは、本来の意味である「買い物カゴ機能」に加え、下記のような機能を提供しています。
- Webショップそのものを作るための機能(CMS機能)
- 決済機能(クレジットカード、電子マネー等々)
- 商品管理機能
- 受注管理・販売管理機能
- 売上管理機能
- 集客機能(メールマガジンやWebマーケティング等)
以上から分かるように、単に「売る場所」の確保だけでなく、マーケティングや簡単な計数管理なんかも、カートサービスだけで完結することができるわけです。
また、大手ショッピングモールサービスだと、さらに集客部分が強化され、高い販売機会を狙うことができます。
カートおよびモールサービスについては、今となってはその数も多数存在し、かつ特徴や費用もそれぞれ異なってきますので、前述した「自社事業におけるビジネスフロー」を明らかにし、「自社に必要なこと」と、各社の機能を突き合わせて考えることによって、どのサービスが自社にとって適当か、判断する必要があります。
(個別のサービスの詳細については、言及を控えさせて頂きます。検索すれば山ほど出てきます)
◆ショッピングカートサービス選定のポイント
選ぶ時のポイントは、「コストパターン」「自社事業規模とのバランス」「カートシステムの実績」です。
コストパターンについては、固定費と従量課金のバランス、また追加必要の有無についてをきちんと見ましょう。一見安くても、多くの機能が別料金になっていて、最終的には月々のコストが膨らんでしまうケースが多くあります。
自社事業規模とのバランスについては、例えば事業としては100アイテムくらいしか扱う予定がないのに、「5000商品まで対応!!(でもコスト高)」とうたうサービスを使う意味はありませんよね。
実績としては、そこのカートシステムを使って成功してるショップがどれくらいあるか、がポイントです。成功しているショップがあれば、少なくともそのショップ程度の成功までは当該システムで対応できるという何よりの証明になりますし、ベンチマークとして参考にすることもできます。
また、安易に巨大ショッピングモールに出店することは危険な場合もあります。
巨大ショッピングモールは、確かに単独ショップとは桁違いの集客効果を得られる反面、コストも桁違いの場合が多いです。お客様が集まる分ライバルも多いわけで、その中で目立つために広告出費がかさみ、元々の原価率によっては、幾らやっても黒字にならない、という話も良く聞きます。
個人事業主の場合、もし万が一大ブレイクして自社で対応できないほどの注文が来た場合、逆に困ってしまう状況にもなり得ます。何事においても「身の丈に合っている」かどうかは、とても重要なことです。
◆ただほど高いものはない
既存のサービスは、そのほとんどが有料ですが、自分でショッピングサイトを作れば、当然お金はかかりません(サーバー代等除く)。例えば世の中にはオープンソースという便利なものがあり、これらは、ライセンスに定められた規定さえ守れば、誰でも自由に使うことができます。勿論、機能も好きなように作りこむことができます。
ただ、個人的にはこれはオススメしません。
何故なら、実際のサイト構築をすべて自分で(実際は外部の会社に委託して)やる必要があり、そのコストがバカにならないからです。さらにはオープンソースのプログラムは頻繁にバージョンアップという名の改変が度々行われます。都度それに対応するコストも、継続的にかかってしまいます。
もしあなたが「本職のプログラマ」で、すべて自分の手を動かすことによって構築費用が文字通りゼロで済むとしても、やはりオススメできません。自分でECをやる以上、時間をかけるべきは確実に「そこ」ではないからです。
◆さあ開店!
ショッピングカートを選定した後は、
- カート運営会社との契約
- 各種設定
- 商品情報の登録
- 見栄えの調整
まで完了すれば、開店準備は万端です。
実際、ECサイトを構築する作業のほとんどは、この「ショッピングカートの導入」で終わることになります。
後は「やることリスト」を確認して、受注から発送までのシミュレーションを行えば、あなたは明日から憧れの(?)「ショップオーナー」です。
・・・が、開店したからと言って、お客さんが来るかどうかはまた別の話です・・・その辺は次回の連載にて。
次回は「始めてみたけど売れない!!KPIの立て方とPDCAの回し方について」です。